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ジャン=クロード・カテンデ氏特別講演「コンゴの民主化と人権問題」参加レポート

こんばんは。@africa_iiyoです。

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東大で開催された、「コンゴの紛争資源問題からとらえるビジネスと人権」シリーズセミナー

ジャン=クロード・カテンデ氏特別講演「コンゴ民主化と人権問題」に参加してきたので、軽くレポートを書いてみたいと思います。

gsdm.u-tokyo.ac.jp

 

 ・コンゴ略史

・現カビラ政権について

・カセンデ氏の活動

・国家による人権侵害

・最後に

 

コンゴ略史 

1960年 ベルギーから独立、直後に軍の反乱によりコンゴ動乱が開始

1965年 軍のクーダターにより、モブツ・セセ・ココ政権開始

1994-95年 ルワンダジェノサイド後に大量の難民(120万人)とルワンダ反政府軍流入、治安悪化

1996年-1997年 第一次コンゴ紛争

1998年-2003年 第二次コンゴ紛争

2001年ローラン・カビラ大統領が暗殺され、息子のジョゼフ・カビラ政権へ交代

2003年 内戦終結

2016年 大統領選挙未実施

 

豊かな鉱物資源、広い国土面積、ゴリラやオカピなど動植物資源にも恵まれ、本来大変豊かな国。しかし、この国で争いは絶えない。コンゴで特に大きな問題は以下の3つだと思う。

タンタル、コバルト、スズなど豊かな鉱物資源の権益の独占

②内戦終結後も活動する反政府勢力

③政府による人権侵害、権力の私物化、腐敗

特に今回の講演会では③政府による人権侵害、権力の私物化、腐敗が扱われた。

コンゴは200年以上に人権侵害にさらされてきた。ジェノサイド、資源収奪、性暴力など。ASDHOというNGOで活動するカセンデ氏。コンゴの民主主義、政府の人権侵害、民主主義が失敗した理由等に関して講演してくださいました。

 

・現カビラ政権に関して

まず最初に驚くのが大統領カビラの資産。現ジョゼフ・カビラ政権2006年より開始したが、モブツが32年間権力に居座ったのに対し、カビラは17年間だがその資産は250億ドル、実にモブツの3倍だという。コンゴの豊かな資源のみならず、企業利益、警察・司法等の権力も「私物化」されている。その一方で、コンゴ民の難民数は世界で6番目、国内避難民数では世界トップである。

また、2011年にカビラ大統領は再選したが、憲法に基づけば2016年に選挙が開催され、政権は交代するはずだった。選挙不履行に対しデモが行われ、五十人以上が殺害された。コンゴカトリック教会が政権側と仲裁に入り、2017年12月に選挙開催予定だったが、結局開催せず。現政権は「非合法で正統性のない政権」だと怒りをあらわにしていた。

 

 ・カセンデ氏の活動

カセンデ氏はASADHOで弁護士として活動しており、団体は人権の保護と向上を目的にしている。具体例では、弁護士を雇うことのできない貧困層に弁護士を提供、人権に関連する書籍を取り扱う図書館の運営、自身を守る手段を知ってもらう目的で人権に対する国家規範・国際条約の情報の共有、人権侵害のモニタリング等を行なっているという。

 

・国家による人権侵害

カセンデ氏が繰り返し強調するのは「国家による人権侵害」だった。カビラ大統領をはじめとし、政府は権力に居座るために民主化を利用し、反体制派を徹底的に弾圧してきた。

カセンデ氏によれば、若者が選挙が実施されていないことに対し異議を唱えデモを起こした。しかし、平和的なデモに対し警察や治安部隊が実弾で対抗し若者が犠牲になった。彼が紹介した写真はあまりにも痛々しかった。また、彼によると、彼のASADHOの同僚は刑務所内で殺されたという。

他にも、非法少年とされた少年たち100名を警察の将軍が殺害したという。この事件は、数々の人権擁護団体に非難され、一時将軍は職務停止となったが、その後将軍は解任されるどころか昇進してしまった。

 

本来国民をも守るはずの政府が人々を弾圧するために権力を行使する。一般市民は武装組織に怯え、資源の恩恵を受けるのは一部のものや外国企業で、女性は性暴力にさらされ、コンゴ国民の直面している状況は大変深刻である。そして講演をしてくださったカセンデ氏のような人権擁護家は、自身の身にいつ何があってもおかしくないと訴えていた。

 

共通して彼らが訴えるのは「政治的自由」憲法にもその権利は保障され、一般市民が本来当たり前に持っているもの。しかし、コンゴではそれは許されない。しかし、政治的自由は時に自身の命よりも大事だということが、今回のコンゴだけではなく他の国でも見て取れる。日本にいると当たり前のように思える政治的権利。「自由」がいかに重要なものであるかがわかった講演だった。

 

・最後に

独立したコンゴの初代首相パトリス・ルムンバが妻に当てた手紙。(この手紙書いた時には、死を覚悟していたと言われる。)

 

「歴史は何時か審判を下すだろう。しかし、その歴史は、ブラッセルで、パリで、はたワシントンや国連で教えられる歴史ではない。それは植民地主義者とその傀儡から解放された国々に於いて教えられる歴史だ。アフリカは自らの歴史を書くであろう。」

アフリカ映画案内 – ルムンバの叫び | Cinema Africa

皮肉にも、植民地時代の負の遺産は今もなお残る。

 

合わせて以下の記事もお読みください。

www.bloomberg.com

 

むらかみ